完全アウェイは不完全ホームの裏返し

55.△0―0 南アフリカ 国際親善試合(ポートエリザベス) 2009/11/14
56.○4―0 香港 アジアカップ最終予選(香港)      2009/11/18

 怪我で放出まで噂されたヤンキースの松井秀喜が、ワールドシリーズという大舞台で
MVPを獲得した。打席から伝わる鬼迫、力強いスイング、大きな当たりがファウルに
なっても途切れない集中力、ホームランを打っても緩まない表情。勝利を掴み取るまで
一貫した姿勢を崩さなかった。

 この素晴らしい結果は、精神的にも、肉体的にもベストなコンディションでシリーズ
に臨めたから残せたのでしょう。晴れ舞台とベストコンディションの幸運な出会い。こ
こまで実力を発揮できなかった歯がゆい思い、その憂さを晴らしたMVPに大きな拍手
を送りたい。

 日本代表も全員が松井のようにベストコンディションで南アフリカ大会を迎えられれ
ば好成績が残るはず、決勝トーナメントにも進出できる。松井の活躍はそんな期待を抱
かせる出来事でした。残り8か月、照準を南アフリカに向けて、モチベーションが徐々
に盛り上がるマッチメイクをして欲しい。


 南アフリカ戦のキャッチフレーズは「完全アウェイ」。この「完全」ってなんだ?い
つもはカネにものを言わせて「ちょっと来い」と日本まで呼びつけ、長旅の疲れを抱え
た二軍メンバーと戦う「不完全ホーム」が続いただけに、今回はその汚名を返上する試
合ということでしょうか。

 でも「完全アウェイ」って負けた時の言い訳にもなる。盛り上げているのか、言い訳
の準備をしているのか。その南アフリカ戦の結果はドロー。「完全アウェイ」で「完全
勝利」とはいかなかった。

 監督に復帰して初戦のパレイラは負けなければいいと考えた。日本もアウェイで負け
なければ勝利に等しいと考える。試合が進むに連れて、徐々に両者の思惑が一致しはじ
めるとこの試合の醍醐味が失われてしまった。

 まぁ、次の親善試合は格下との「安全ホーム」ではなく、格上の一軍メンバーと戦う
「完全ホーム」をキャッチフレーズにして欲しい。


 イタリアとのマッチメイクがアジアカップ予選と重なって流れたときに、予選免除の
ベスト3を逃した前回のアジアカップを「負の遺産」と評されているのを見かけた。し
かし先月のスコットランド戦やトーゴ戦のような試合しか組めないのなら、格下と真剣
勝負をしている方がまだましだ(イタリア戦も観たかったけど…)

 その香港戦。格下との対戦では圧倒的な強さを示してこそ自信になるが、危ない場面
も目についた。格下に隙を見せているようではまだまだ。岡田監督には「ベスト4」が
見えているらしいが、私には一向に見えてこない。

 「ベスト4は理屈ではなく、見えるんです」(早大でのトークショー)
 監督に見えるものが私には見えない。私に現実を見る目が無いのか、監督が幻覚でも
見ているのか、どちらかに違いない。

 ドイツでは代表のゴールキーパーが自殺した。うつ病だったらしい。健全な肉体に健
全な精神が宿るとは言い切れないが、運動する者、体を動かす者、身体性を絶えず意識
している者は精神を病むことが少ないはずです。しかし世界中で話題になる代表選手と
もなれば、個人の身体性が政治や経済に振り回され、何よりも絶えず注目されることが
精神的な重圧になるのでしょう。ご冥福を祈ります。


 もしも期待という他者の夢が重圧になるのなら、注目される監督が「ベスト4」という
幻覚を見ても何ら不思議な話ではない。




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